2023.11.28
部長候補の人材育成研修として活用、飲食店の立ち上げ・運営で新規事業体験
NECパーソナルコンピュータ株式会社
(パソコンメーカー)
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導入の目的
次代のリーダーとなるべく部長候補に、新規事業の実地経験を通してマルチタスク遂行のノウハウなどを学べる場を提供する
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利用状況
参加メンバー3人が飲食店(ラーメン店)の立ち上げを1カ月間かけてプランニングし、2023年7月11日から8月末まで実店舗を運営
NECパーソナルコンピュータは、パソコンやタブレット製品の研究開発・製造・保守・販売を手掛けています。森部氏が本部長を務める商品企画本部は、新製品の企画・商品化を担う最上流工程の部門です。
業務全般のPDCAをリードする森部氏は、次の時代を担う部長候補のリーダーシップ育成のために「飲食店立ち上げ研修」の導入を決めたといいます。研修の取り組み内容や、参加メンバーにもたらされた変化についてお聞きしました。
1.受講前の課題
実地経験に欠ける座学やOJTでは、教えたことがなかなか響かない
-「飲食店立ち上げ研修」の導入前、どんな課題を抱えていましたか?
私のチームでは、毎年チャレンジャブルな研修に取り組んでいます。しかし、業務を遂行する上で私がいつも言っているようなことを座学やOJTで伝えようとしても、なかなか響かないという課題がありました。
そこで、飲食店立ち上げの実地経験を通して気付きを得てほしいと期待。さらなるリーダーシップの発揮が期待される部長候補3人を参加メンバーに選びました。
受講を伝えたとき、最初はみんな面食らった様子でした。でも、ラーメン店を立ち上げるということには興味を持ったと思います。だから、あまり抵抗はなかったですね。
ただ、店舗の営業期間は1カ月半と長く、オープン1カ月前からのプランニングを合わせた研修期間は3カ月間に上ります。その間も会社の通常業務をこなさなければならないため、業務の負荷を不安視するメンバーもいました。
それでも、部長候補たる者にはマルチタスクをこなせるようになってほしいと考えました。だから「これを乗り越えてこそ、次のステップに進める。自分で考え、効率的に仕事をしてください」と伝えました。
-「飲食店立ち上げ研修」導入の決め手は何でしたか?
2023年3月に本気ファクトリーの畠山代表と初めてお会いする機会があり、「飲食店立ち上げ研修」のお話を伺いました。私もちょうど、そのような実地研修を取り入れたいと考えていたため、導入を即決しました。
実は私自身、大学・大学院時代、飲食店で5年間ほどアルバイトをした経験があります。当時はバイトリーダーとして、飲食店販売商品の在庫管理をしていました。閉店間際になると在庫は減りますが、商品の種類はある程度維持しながらそれぞれの個数を少なくする。そうすると、お客様にとっては選択肢のバリエーションが多くなり、満足度も高まります。
大学院でもそうした最適化理論、いわゆるナップサック問題(価値と重さが決まっている複数の商品を容量が一定のナップサックに入れる際、いかに商品の価値の和を最大化するか)について研究していました。
商品企画本部も商品の価値を最大化させるブランディングのチームです。そうした研究をベースに飲食店の現場でPDCAを回してきた経験は、新たなプロダクツを企画、商品化し、ユーザーからのフィードバックを得て改善するというPDCAをクイックに回すことに役立っています。
2.実際に導入してみて
ダイレクトに商品を提供し、最短でフィードバックを得られた
-実際に導入してみた感想はいかがですか?
ラーメンを商材に選んだのは「万人受けしそう」と考えたからです。ただし、3人とも飲食店でのアルバイト経験はなく、1人は包丁すら握ったことがありませんでした。しかも、あらかじめ用意されているのは麺とスープのみ。それでも3人は一生懸命、食材とメニューを考えていました。
私たちは口を出さずに見守るだけでしたが、それぞれのリーダー候補がどう動くのかがよく分かって面白かったですね。
また、目の前で作った商品をダイレクトに提供し、最短でフィードバックをいただける経験ができたのは、メンバーにとって非常に有意義だったと思います。研修が終わった後の反省会でも「お客様の目線で商品を企画しようと思う気持ちが一層強まった」と話していました。
パソコンの商品企画はリリースの1年前に始まる上、私たちがユーザーに製品を直接販売してフィードバックを頂くことはできません。だから、本当に新鮮な経験だったと思いますね。
-店舗のプランニング、運営は順調でしたか?
3人は社内の役職としては並列ですが、新規事業を始めるとなれば絶対に役割分担が必要です。メニューだけでなく、価格を決めて損益計算書(PL)も作らなければなりません。もちろん、食材の発注や店内の清掃、売り上げ管理、プロモーションも不可欠です。
最初は黙って泳がせていましたが、3人はそうしたことを決めないままラーメンの味にこだわり始めました。それで開店スケジュールの進捗が遅れ出したので、「役割分担をしてください」という指示を出しました。
どういう店にするかというコンセプトを決めた上でシミュレーションをした段階では、1日20杯売れれば黒字になるというイメージを描いていました。
最終的には赤字でしたが、1日20杯以上売れた日もあります。東京・浅草橋の店舗に足を運んでくれた社員からは「素人が作った割にはおいしい」と好評で、営業期間中は秋葉原の自社オフィスに出張出店もしました。
今回の研修はテレビの経済情報番組で取り上げていただき、社内でも「何だか面白そうなことをしている」と話題になりました。
3.導入の成果
商材の視野が広がり、ゼネラリストとしての資質も向上
-「飲食店立ち上げ研修」導入によって、どのような効果がありましたか?
メンバーは座学やOJTで伝え切れないことを自分たちで学んで体験したことで、私に以前から言われていたことを理解できるようになったと話していました。今回の研修のおかげで、私からのアドバイスやコメントがより響く状況になったと思います。
私にとっても、それぞれのメンバーの適性が分かったのは良かったですね。3人がリーダーになったときにどんな立ち振る舞いをしそうか、通常業務にプラスアルファのタスクが加わったときにどんなオペレーションをするか、各自のスタンスをつぶさに見ることができました。
私たちはパソコンの商品企画に関してはエキスパートです。ところが、今回のようにいざ新規事業を始めるとなると、お手上げという人間が多いと思います。
新規事業を始めるとなれば、経営管理や人事管理など一気にたくさんのことを進めなければなりません。今回の研修では、ゼネラリストとしての成長ぶりを目の当たりにすることもできて良かったと思います。
-導入の成果を活かして、これからどんなことに取り組みたいですか?
商品企画のスキルアップです。いつも扱っているパソコン以外の商材に視野を広げられたことで、今まで気にしていなかった商材にも目が向くと期待しています。
これまでは3人とも、ラーメン店の前を素通りしていたかもしれません。しかし、店舗運営を経験したことで、店構えやメニューなど気付きのポイントが変わったと思います。そうした変化が日常業務に活かされればプロモーションの見せ方などに目が向き、商品企画にもフィードバックされるはずです。
中堅クラスのリーダー育成など私たちと同じ悩みを抱えている企業は多いと思います。やはり実践に勝るものはない。その点で、「事業責任者Boot Camp」はそのような課題の解決にマッチする素晴らしいプログラムです。3カ月間の長期にわたり社内の人的リソースを割くことが可能であれば、ぜひおすすめしたいです。本気ファクトリーさん、人材育成の観点で本当によい研修だと思うので、様々な会社にもっと広めた方がいいですよ。なんなら、私がお手伝いしたいぐらいです(笑)
-森部さん、ありがとうございました!